免疫と栄養素

感染症から身を守るために

感染症の予防には、マスク着用と手洗いが大切

現在、日本国内でもウイルスや細菌などによる感染症への不安が高まっています。

まだ、治療法が確立していなかったり、重篤な症状をも引き起こす感染症に対しては、マスクの着用、手洗い、消毒など、できる限りの自衛手段をもって、『予防』=『体内への病原体の侵入を遮断すること』が大切です。

しかし、多忙な毎日の中では隙も生まれ、予防にも限界があります。

その際、なによりも重要となるのは、体力・免疫力の維持になります。

予防手段をかいくぐった、ごく少量のウイルスや細菌が粘膜に付着したとしても、私達の免疫システムによって、直ちに駆逐できれば感染は成立しません。

また、感染してしまったとしても、免疫システムがしっかり働けば、重篤な症状まで進まず、短期間で治癒することも期待できます。

このように明暗を分ける免疫力ですが、その活性化と維持のためには、充分な栄養と睡眠,適度な運動が必要となります。

また、体温を下げないことや、ストレスを溜めないことなども大切です。

免疫システムでは、多種の栄養素がチームプレー

免疫は異物からカラダを守る防御システム

そもそも、免疫とは『ウイルスや細菌といった病原体や花粉・ハウスダストなどの異物からカラダを守る防御システム』。

この免疫システムには、多くの栄養素が複雑に連携して関わり、その機能を保っています。

1970年代以降、日本でも「ビタミンCを摂ると、風邪を引きにくい」と言われるようになり、予防のために、ビタミンCが入っていそうな果物やジュースを飲んだり、ビタミンCの散剤やタブレットを摂ったりするようになりました。

もちろん、これは悪いことではないのですが、「ビタミンCを摂れば良い!」、そんなに単純なことではないのも当然です。

免疫の活性化・維持のために、多くの栄養素がそれぞれの役割を果たしていますが、それだけではなく、チームプレーとしても働いているということです。

カラダづくりと同様に、免疫を健全に機能させるためにも、主要栄養素であるタンパク質や脂質、腸内環境を整える食物繊維、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素が必須になります。

このページでは、現代人の食事だけでは不足しがちな微量栄養素である『ビタミン・ミネラル・植物栄養素』の、免疫システムにおける働きと重要性について簡単にピックアップいたします。

ビタミン

免疫力の維持にはビタミン各種も重要な役割を果たしています

ビタミンは、エネルギー源や体をつくる成分ではありませんが、人が健全に成長し、健康を維持する働きをしています。

ビタミンは他の栄養素がうまく働くために潤滑油のような役割をするため、車のエンジンオイルに例えられることもあります。

また、免疫システムにおいても、各種のビタミンが連携して働き、カラダの防御という重要な機能を支えています。

ビタミンの必要量は微量なのですが、体内でほとんどつくることができないので、食べ物から摂ることが必要です。

ビタミンA

病原体に対する障壁として皮膚や粘膜がありますが、多くの場合、病原体は弱いほうの粘膜から侵入してきます。
ビタミンAは、粘膜細胞が健全に機能を維持するのに重要な働きをしています。

さらに、白血球の増殖を促進して免疫力を高めます

数々の研究結果が、ビタミンAを補充することにより、免疫が強化され、感染症関連の罹患率と死亡率が低下することを報告しています。

ビタミンB1

最近の研究から、腸内にある「パイエル板」の免疫細胞の維持に深く関わっていることがわかっています。

ビタミンB1が減るとパイエル板が小さくなって防御機能が弱くなり、感染症にかかりやすくなる恐れがあります。

ビタミンB2

代謝を促進し、細胞の活性化を促してくれますが、病原体に対する障壁となる粘膜を強化したり、維持したりするのに欠かせない栄養素としても免疫強化に関わっています。

ビタミンB6

タンパク質代謝にかかわる働きをしますが、リンパ球とインターロイキン2の産生を促進するなど、免疫機能においても重要な役割を果たしています。

ビタミンB12

タンパク質の代謝や、ヘモグロビンの合成を助け貧血を予防するなど、いろいろな働きがありますが、ビタミンB6や葉酸とともに免疫力強化に関わっています。

米国ライス大学による動物実験により、ビタミンB12の欠乏は、複数の致命的な病原菌への感染リスクにつながることが確認されています。

葉酸

ビタミンB群の一種である葉酸は、免疫システムの適正な働きに影響していることが分かっており、不足すると、自己免疫疾患(腸の炎症など)に繋がります。

ビタミンC

コラーゲンの合成に深く関与するなど多くの働きの他、免疫機能の上でも重要な役割を果たしており、白血球の働きを強化し、免疫力を高めます。

過剰に発生した活性酸素は、体内の正常な細胞や組織を傷つけ、免疫力を低下させてしまいますが、ビタミンCは、AやEとの連携によって、抗酸化作用を発揮します。

ビタミンD

ビタミンDがカルシウムの吸収や蓄積を助け、骨の健康の維持に働いていることはひろく知られていますが、「免疫機能を調節する」という重要な働きもあります。

風邪やインフルエンザ、気管支炎や肺炎などの感染症の発症・悪化の予防にも関与することが分かっています。

ビタミンDは食事からだけでなく「日光に当たれば体内でつくることができる」ということも知られてはいますが、夏期は木陰で30分、冬季は手や顔に1時間程度、日光を浴びる必要があり、日本人のビタミンD濃度は極めて低いことが厚生労働省から発表されています。

ビタミンE

美と健康にとって重要な働きをするビタミンとして知られていますが、免疫細胞を直接活性化すると共に、免疫抑制物質の生成を防ぎます。

ビタミンEの欠乏によって免疫が損われることは、ヒトを対象にした研究でも明らかになっています。

現在推奨されている摂取量を上回ってビタミンEを摂ることが免疫を強化し、ある種の感染症にかかりにくくなることも、特に高齢者において示されています。

ミネラル

免疫力の維持にはミネラル各種も重要な役割を果たしています

ミネラルは骨や歯を形成したり、神経の伝達に関わったり、細胞の働きをスムーズにするなど、私たちの身体の臓器や組織を円滑に働かせるために必須です。

また、ビタミンと共に補酵素として代謝を助け、免疫細胞同士で連絡を取り合う連絡物質を円滑に行き渡らせるなど、免疫システムの機能を支えています。

ミネラルは体内で合成することができないため、100%外部補給になります。

基本は毎日の食事バランスですが、ミネラル不足になりがちな現代は、安全で良質なサプリメントで補う工夫も必要です。

亜鉛

亜鉛は、免疫を調節する細胞の正常な発生と機能のために必須なミネラルです。

亜鉛がわずかに欠乏した場合にも、免疫を抑制する可能性があり、さまざまな感染症にかかりやすくなることが明らかになっています。

セレン

セレンは、適切な免疫応答を行うために不可欠です。
セレンの欠乏は免疫システムに悪影響を与えて、ウイルス感染の病毒性や進行を増大すると報告されています。

リンパ球の分化・増殖と、病原体を殺す免疫機能の活性化に充分な量の鉄が必須です。

植物栄養素

免疫力の維持には各種の植物栄養素も重要な役割を果たしています

「植物栄養素(フィトケミカル)」とは、野菜や果物、海藻などの植物に含まれる成分の総称です。

ブドウやベリーなどの「アントシアニン」、緑茶の「カテキン」、トマトの「リコピン」、ほうれん草に多い「ルティン」などが有名ですね。

これらの栄養素は、元々、植物が紫外線や有害物質などの害から自身を守るために作り出した成分で、優れた抗酸化作用をもつものが多いのもそのためです。

植物栄養素は、免疫を高め、病原体などを攻撃するタイプのものや、過剰な免疫によって引き起こされるアレルギーや炎症反応を抑える効果をもつものなど、さまざまなかたちで私達の免疫システムの機能維持を助けてくれます。

植物栄養素がもつ働きはそれぞれ異なるため、単体で摂るよりも組み合わせて摂ることが重要です。

このページのまとめ

私達が感染症から身を守るためには、「予防{病原体の侵入を遮断する)」と同時に、「免疫の活性化(体内に入ってしまった病原体を駆逐する)」が重要です。

免疫システムの活性化のためには、タンパク質や脂質の他にも、『ビタミン・ミネラル・植物栄養素』など多くの微量栄養素が役割分担しながら、チームプレーで働いています。

それらの栄養素のどれかひとつだけでも不足していれば、免疫システムに脆弱性が生じ、ウィルスや細菌の繁殖を許すことに繋がりかねません。

感染症から身を守るために、『しっかり予防、きちんと栄養』を心がけましょう。